“年間36億回”の工数削減を目指す 「J-MORA」で競合の垣根を超えた物流改革へ(前編)
10月16日、福岡県宮若市にあるトライアルのAI研究施設・MUSUBU AIで、リテールAI研究会によって開発された新システム「J-MORA」の記者発表会が行われた。J-MORAは製造業・卸売業・小売業向けの商品管理システムで、従来行われていた作業の抜本的な効率化が見込めるという。3つの業界が抱える課題と、今回の新システムについて、開発者である一般社団法人リテールAI研究会理事林拓人様と、トライアルカンパニー商品管理推進部部⻑の牧草雄⼠に話を聞いた。
―J-MORAとはなんですか。また開発背景についても教えてください。
林様「J-MORAはリテールAI研究会が開発した企業が取り扱う商品情報を⼀元管理し、異なる企業間や部⾨間の業務プロセスを共有できるオープンプラットフォームです。製造業・卸売業・小売業を中心に、2022年から実証実験を行い、この度正式にローンチをすることができました。
一般的にメーカー等の商品は製造拠点から卸へ、卸から小売りというルートで流通するわけですが、その際に各社で商品登録という業務が発生します。自社で取り扱う商品について情報を入力するのですが、商品名やメーカー名だけでなく価格やアレルギー情報、発売日や終売日、納品時のケースの高さや奥行きなど、部門によっても異なりますがおよそ80項目前後はあります。3業界合わせると各項目の入力数は総計36億回にも上るということもわかり、1つの商品に対する情報を各社それぞれで1つずつ入力するのは非常にもったいない。ここを共通で管理できるようなシステムがあれば大幅に業務効率は改善するのでは、という考えからJ-MORAの推進を行いました。
J-MORAの推進には様々な観点が必要なため、複数の会社でプロジェクトチームが組成されました。流通業界のDX推進を行っている我々リテールAI研究会が音頭を取り、小売りからはトライアルグループ、メーカーからはコカ・コーラボトラーズジャパン様や旭食品様、卸からはヤマエグループホールディングス様が参画しています。」
牧草「お互い普段は取引先関係や競合関係になる企業もありますが、商品登録という業務には競争性はありません。そのため業界の悩みをみんなで共有し課題解決に向かうことができています。」
―J-MORAでの商品登録はどのような仕組みで行われるのですか。
林様「流通の世界には商品情報を管理する「商品マスタ」というものがあるのですが、端的にいうと登録の効率化と自動化です。
具体的には、製造業・卸売業務がそれぞれJ-MORAに商品情報を登録することで、小売業が持つ商品マスタへRPAを使い、システム内部で自動登録がなされます。これにより3業界で重複していた商品登録業務の手間を効率化できるとともに、各社の入力内容も統一することができ、バラバラのフォーマットにそれぞれ対応するプロセスを失くすことができます。
2023/10/17 記者会見の様子
J-MORAのクラウドデータベースはAIによる機械学習、自然言語処理、オープンソース、ChatGPT等のテクノロジーを備えています。またAPIによるシステム間の接続にも対応しており、SlackやLINEとの連携のほか、手動での登録も可能です。各業界の様々な部門の方が使用するものなので、できる限り柔軟に使える状態を目指したいと考えています。」
J-MORAの詳細についてはこちら
後編へ続く